平成29年9月26日(火)~11月26日(日)の期間に展示しております作品をご紹介します。
渋谷英一 しぶやえいいち
《黒彩器【こくさいき】》 2011年
高さ29.0×最大径56.0cm
弾力的な軟らかい材料をつまんですっと引っ張ったような薄い口づくり。その見掛けの軽質な触感は、パン生地の乾いた質感と重なります。ところが、豊かな円みをもたせたこの口辺とは対照的に、深鉢【ふかばち】のもう一方(対岸)の口縁部【こうえんぶ】には、ねじれた鋭い稜線【りょうせん】の装飾帯がうねり、器の内面空間をしっかりと包み込んでいます。この器の流れるような動勢は、二つの口縁部の造形が呼応して生じさせる視覚効果なのです。保守的な器づくりからすれば、外連味【けれんみ】ある手法に映るかも知れません。しかし、手びねりで立ち上げた肉厚の器胎【きたい】を入念に削り出した、口辺の歪【いびつ】な卵型のアウトラインは、ロクロ成形の熟練一辺倒の思考からは得難い、かたちの鮮度が宿っています。
渋谷英一(1979年生まれ)は、従来的な萩焼の延長では掬【すく】いきれない複雑多様な現代人の感性を、どうにか自分なりに突き抜けたかたちで表現ができないものかと、模索しながらユニークな器を続々と創り出しています。
≪お問合せ先:山口県立萩美術館・浦上記念館 TEL0838-24-2400≫